【アーシェ】
「ごめんなさい、遅刻しちゃった!」

【レニ】
「遅い」

【アーシェ】
「道に迷っちゃって……」

【レニ】
「地図は渡したはずだ」

【セイジュ】
「あれだけ丁寧に説明を書いておいたのにね」

【アーシェ】
「だって……難しい字がいっぱいで読めなかったんだもん……」

【レニ】
「読めないおまえが悪い」

【アーシェ】
「でも、見たことない字ばっかりだったよ」

【セイジュ】
「ああ、ごめん、君、まだ漢字は読めないんだっけ?」

【アーシェ】
「(わざとだ、絶対わざとだ……)」

【カイル】
「姫様、ところで手に持っておられる紙袋はなんですか?」

【アーシェ】
「あ、これ……」

【カイル】
「うわあ、耳です! 私と同じ黒い耳ですよ!」

【アーシェ】
「記念写真を撮る時につけてねって、持たされちゃったんだけど……」

【カイル】
「早く、早くつけてみて下さい!」

【アーシェ】
「こう?」

【カイル】
「あああ、姫様可愛いです! ほんとに可愛いです! 可愛くて可愛くて可愛いです!!」

【アーシェ】
「え、えへ。そうかな。えっと、鏡、鏡は……っと、浮かれてる場合じゃないの!」

【カイル】
「どうかされました? あれ、猫耳、あと二つ残ってるみたいですが………………ま、ま、まさか」

【アーシェ】
「……あの二人の分だって」

【カイル】
「ひいっ!」

【アーシェ】
「つけろなんて言ったら、また虐められちゃうよ。夕飯抜きにされたり鍵かけた部屋に閉じ込められちゃったり、あんなことやこんなことまで……!」

【カイル】
「おいたわしや姫様〜!」

【セイジュ】
「楽しそうだね」

【アーシェ】
「きゃあっ!」

【カイル】
「ひっ!」

【セイジュ】
「猫ちゃんが二人して何やってるのかと思ったら、一匹はアーシェじゃないか。ふふ、なかなか似合ってるよ」

【アーシェ】
「あ、ありがとう……」

【セイジュ】
「後ろに何を隠したの? 見せてごらん」

【アーシェ】
「あっ」

【セイジュ】
「へえ、あと二つあるんだ。てことは僕達の分かな」

【アーシェ】
「あの、その」

【セイジュ】
「どう、似合う?」

【アーシェ】
「…………に、似合う、凄く、似合う。
(あっさりつけちゃった……。セイジュってやっぱりよくわかんない)」

【セイジュ】
「ありがとう。……レニ!」

【アーシェ】
「あ、あ、あ。よ、呼ばなくていいよ〜」

【レニ】
「なんだ」

【セイジュ】
「はい、これ」

【レニ】
「……は?」

【アーシェ】
「(……目が怖いよ〜)」

【セイジュ】
「みんなで仲良くお揃いだってさ」

【レニ】
「猫耳なんてバカしかつけない」

【カイル】
「ひ、酷い……。元々耳がある人はどうすればいいんですか」

【レニ】
「もぎ取れ」

【カイル】
「な、なんてことを〜」

【セイジュ】
「ほらほら、そう言わずに、ね」

【レニ】
「や、やめろ、俺はそんなものつけないぞ。セイジュ、ふざけるな!」

【セイジュ】
「はい、今がシャッターチャンスだよ。みんな笑って笑って」

【アーシェ】
「は、はい!」

【カイル】
「にゃ!」

【セイジュ】
「ほらレニも!」

【レニ】
「む……」

 カシャ!





【レニ】
「……セイジュ……、おまえ何考えてる」

【セイジュ】
「レニが嫌がる顔を見たかっただけだけど? ねえ、アーシェ、そうだよね?」

【アーシェ】
「え、私!?」

【セイジュ】
「これ、元々彼女が持ってきたものだしね」

【レニ】
「元凶はおまえか」

【アーシェ】
「ち、ちが……」

【レニ】
「いい度胸だ。おまえ、どうなるかわかってるよな?」

【アーシェ】
「……カイル」

【カイル】
「……は、はい」

【アーシェ】
「逃げよう!」

【カイル】
「はい〜!!」

【レニ】
「待て!」

【セイジュ】
「ふふ、がんばって逃げてね」

【アーシェ】
「きゃ〜!!」



★END★



illustration by 東条さかな
written by ひよ

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